当院のアトピー性皮膚炎治療方針その3(2歳から12歳まで)-2合併症について
当院では、アトピー性皮膚炎の患者様の治療では年齢を意識して診療にあたっております。今回は2歳から12歳までの治療方針<その2>アトピー性皮膚炎の合併症について説明します。
アトピー性皮膚炎は、もともと乾燥肌のお子さん、繰り返す炎症の寛解増悪を繰り返すうちに乾燥肌となったお子さんなどでは皮膚バリア機能、免疫監視機構が低下します。その結果、ブドウ球菌や単純ヘルペスなどのウイルスの侵入が容易となります。特に大事な3つの疾患を挙げます。
- 伝染性膿痂疹
皮膚バリア機能の低下により皮膚表面から感染すると菌の増殖に伴って紅斑、水疱が生じます。これが俗称とびひ、伝染性膿痂疹です。おおむね2歳くらいから学童期にかけて発症します。水疱が生じるのはブドウ球菌の毒素によります。抗生物質がよく効きます。
- カポジ水痘様発疹症
口唇や陰部などに生じる単純ヘルペスが、アトピー性皮膚炎患者では、全身性に水疱を形成し、水痘(水ぼうそう)様を呈する疾患です。多くは発熱を伴います。抗ウイルス薬が特効的に効きます。
- 伝染性軟属腫
いわゆる「水いぼ」です。伝染性軟属腫ウイルス感染によるもので、通常の「いぼ」の原因(ヒト乳頭腫ウイルス)とは原因が異なります。
主に体幹・四肢に1~2ミリの丘疹を生じ、掻破により周りに広がります。無症状ですが、アトピー性皮膚炎患者の皮膚ではかゆみを伴うので、一緒に水いぼも掻破してしまうことも多いようです。
水いぼは6か月くらいで自然治癒する性質があるので、見た目をよくしたいだけなら治療しないでよいという考えがあります。一方で、広がってしまうと他人にも移すので治療した方がよいという考えもあります。アトピー性皮膚炎患者の皮膚はバリア機能が低下していることが多いので、拡大することが多いようです。実際、アトピー性皮膚炎の患者とそうでない人で比較すると発症率が高いことがわかっています。当院でも積極的に治療することをお勧めしています。
こういった合併症をなるべくださないようにすることも、乳幼児、学童期のアトピー性皮膚炎の管理として大事な診療の一つです。感染症を直接予防するのではなく皮膚バリア機能を損なわないようにするのに保湿が必要です。
次回は、「当院のアトピー性皮膚炎治療方針その4(12歳(思春期頃)から成人まで)」です。