当院のアトピー性皮膚炎治療方針その4)12歳(思春期頃)から成人まで

当院では、アトピー性皮膚炎の患者様の治療では年齢を意識して診療にあたっております。今回は12歳(思春期頃)から成人までについて説明します。

 

何割かの患者さんは皮疹が落ち着き、通院もあまりしないで済むようになります。その理由としては思春期を迎え、毛包と連結した皮脂腺から皮脂が分泌され、皮膚の最外層に皮脂膜が形成されるためと考えられます。バリアが厚くなるので刺激から守ってくれます。しかし、全員がそれで治るとは云えず再発のために外用を中止できない状態が続く方もいます。この年齢層ではほぼすべての治療法が受けられる年齢ですので、いつ何を使うかが問題になってきます。

 

  • ステロイド外用薬、プロトピック軟膏

ステロイド薬外用は、手ごたえのある、この疾患の治療に欠かせない武器といえます。また皮膚が厚くなってしまう苔癬化にはプロトピック軟膏も有効です。小児用と成人用があり、小児用と成人用がありますが成人ではどちらも使用可能です。効果発現までが遅い薬ですので治療効果をみきわめるのにコツがあります。

 

  • 紫外線療法、液体窒素療法

成人型に多い皮疹のタイプで「痒疹型」の方に特に有効です。痒疹は四肢を中心に全身にできる結節や、やや厚みのある紅斑です。皮膚が厚くなるので外用薬がしみこみにくいため、単に塗るだけでは効果がでにくいので難治性です。ナローバンドUVBやエキシマライトなどの照射や液体窒素による冷凍療法が奏効することがあります。月に2~3回施術をいたします。

 

  • 抗アレルギー薬内服

意外に忘れられているのが抗アレルギー薬内服です。アトピー性皮膚炎では長期間の皮膚乾燥状態により発汗機能が低下することがあり、その結果乏汗症に伴うコリン性蕁麻疹が生じることがあります。蕁麻疹ですのですぐに改善するのですが激しかゆみを伴うため、夜間などを中心に激しいひっかき傷を作ってしまい、そこから湿疹が出現したりします。

強いかゆみを止めるのに抗アレルギー薬が著効することがあります。個人差があるので特定の薬が誰にでも効くというわけではありませんが、一度は試す価値があります。

 

  • 注射薬(抗体製剤)

アレルギー反応の主役である2型ヘルパーT細胞の働きを抑える薬です。ステロイド薬よりも標的が限られている点で効き目もはっきりしているといわれています。早ければ1週間、4週間以内に効果が表れます。皮疹の改善だけでなくかゆみなどの自覚症状が減少するのが特徴です。皮内注射薬ですが、一定期間を経て自宅へ持ち帰ることができます。

 

アトピー性皮膚炎は、今や治らないと諦める疾患ではないといえます。忙しい生活のなかでも通院の時間を確保して、長期計画を立てていくことが大事です。

 

次回は、最終回「当院のアトピー性皮膚炎治療方針その4(12歳(思春期頃)から成人まで)-2、移行支援」です。