当院のアトピー性皮膚炎治療方針その4(12歳(思春期頃)から成人まで)-2、移行支援

とうとうこのシリーズの最終回となりました。

 

移行期支援とは、こどもから大人の医療への移行を円滑にするために、積極的に医療を含むサポート体制が関わり、診療面だけでなく、学業、就職などの社会性の獲得までを含めて支援することです。

 

この支援が必要なのは小児期の慢性疾患のお子さんたちが無事学童期を乗り切った場合、成人期の生活に変化する際に様々なサポートが必要です。この考えを思春期を超えて成人期まで治療が必要な皮膚病患者さんに当てはめて考えてみましょう。

 

前回の解説で、アトピー性皮膚炎は思春期に治りやすいことを説明しました。しかし全員が治癒してしまうわけではなく、成人型アトピー性皮膚炎に移行します。その際にこどもの成長に周囲はどういう配慮が必要でしょうか?

 

こどもの受診ではおとなが必ず付き添って病状を説明します。お子さんは診察室でおとなしくしていなくてはなりません。病気のことは先生がすべて保護者の方に質問するのではないでしょうか?

 

一方、思春期になりますと、立場が一変し、先生は患者さん本人に質問をするようになり、保護者が口を挟むと、「本人のことですから親は黙っていてください」などといわれてしまいます。しかし、ついこのあいだまで、子供は診察室でおりこうさんにしていなくてはならなかったので、まったく逆になってしまうのです。説明をしたくても小さい時のことは覚えていません。つまり受診の時にも思春期にはまだ助けが必要です。

 

皮膚科特有の塗り薬の治療についてはどうでしょうか?小さいときは保護者が薬の管理をしています。塗るのもやってくれます。しかし、思春期に、特に男の子は母親に肌をみせないのではないでしょうか?自分で塗り方をおぼえなくてはなりません。

 

大学進学や就職で一人暮らしを始めるとさらには一人ボッチです。自分で受診計画、先生への説明、薬の管理、治療の実行をしなくてはなりません。

 

以上は、すべて当たり前のことなのですが、医師が年齢による変化が苦労の多いことであることをわかっていると、よりコミュニケーションがとりやすくなると考えています。以前は誰がどの程度手伝っていたか、今はどうなのかなどを話合っていきます。患者さんは大人になった分、自己判断もしがちですので治療、通院を中断しないように援護していきます。

 

これまで6回にわたり当院のアトピー性皮膚炎の治療方針についてご紹介してまいりました。携帯電話でご覧になっている方を意識してあまり長くならないようにしましたので、まだまだ言葉足らずの部分もありました。ご不明な点は来院されたときにご質問なさってください。わかる範囲内ですがお話しますし、答えがない場合でも言葉を交わしている間に患者さんご本人に答えが浮かぶこともあるでしょう。このブログが何かにお役に立てば幸いです。